「高専カンファレンス初風」におけるプレゼン最適化問題
アブストラクト
本記事では,「高専カンファレンス」という場所で,多種多様な,共通点が高専くらいしかない人が対象のプレゼンを行う場合に, どのようなプレゼンをしたらいいのかを示した.
プレゼンをするモチベーションは各自それぞれあると思うが, 特に下記の場合についてどのようにしたらいいのかを考察した.
- 技術的な話をわかりやすく伝えたい.
- バックグラウンドが違う人に対して共感を与えたい.
- ある程度技術がわかる人にも納得してもらいたい.
結論を述べると,ある程度汎用的な話を述べてから技術的な話をしたら良いと思う. ただある程度わからない人がいても仕方がないと思う.
目次
- イントロダクション
- 定義
- ケース1 「学生便覧」って社会人には関係ないでしょ
- ケース2 「秘密計算」という難しい技術をどう伝えるか
- ケース3 自分の「タイムカプセル」はどうだったか
- 終わりに(ひとりごと)
- 結論
イントロダクション
まずは運営の皆様方および参加者の皆様方お疲れ様でした. 運営の皆様方にはこのような場を設けて頂き厚く御礼申し上げます. 専攻科修了後,某国立大学の院生をしております68氏と申します.
Twitterを眺めていると,「参加者100%に受けるプレゼンは不可能」といった声がいくつか上がっていました. ただ,本当にそうなのかな?という疑問が私の中で湧いたのでここに記述しました. 「参加者100%に受けるプレゼンは不可能」というのはおそらく間違い無いんですが, もし貴方が100%にわかってもらいたい,でもどうしたらいいのかわからないのであればぜひこの記事を読んでみてください.
このブログは,大学院生らしく,学術的に本高専カンファレンスにおけるプレゼン手法を考察し, 「参加者みんなにわかってほしいけどどうしたらいいかわからない」という人に向けて説明を書いています. 独断と偏見を含みますので参考意見として,また特定の個人や団体を中傷する目的ではないことをご理解ください. また,学術的考察が目的ですので,人によっては多少"冷たく"感じることがあるかもしれませんがご了承ください.
定義
プレゼンテーション
プレゼンテーションとは, 「作品、計画提案、研究成果、開発商品などの情報を、聴衆に対して発表し伝達すること」
プレゼンテーションで行うべきことは, 「プレゼンテーションの際は、実際に形のないモノを、簡潔かつ判り易く説明する事、そして情報を的確に伝える、資料(視聴覚、配布資料等)の準備、情報を適量平易に提供することが求められる。」
プレゼンテーションを大きくわけると4種類あって,
- 伝えたいことが明確or曖昧
- 論理的に判断するor感情的に判断してほしい(情緒的に判断してほしい)
の2変数の組み合わせによって4つに分類することができる.
ケース1 「学生便覧」って社会人には関係ないでしょ
先日のカンファでは,「学生便覧に休学に関して書いてあるでしょ,だから読もうね」という趣旨のプレゼン(少なくとも自分はそう受け取りました)がありました. 仰る通りで,「学生便覧」の話を卒業生や社会人にしても仕方がないと思います. ただこのケースの場合,「学生便覧」を「ルールブック」として考えると,社会人でも応用可能ではないでしょうか.
今アーカイブ確認してきました
— 68氏@新春カンファ (@mr68shi) 2020年1月11日
まあ確かにこのテーマだと(自分を含む)既卒生には学生便覧は正直当てはまらないですね。ただ、
在学生→学生便覧はしっかり読む
既卒生→規約や契約書の類は読む
というように応用することは可能かと思います。実際自分も読むようにしたいなと思いましたし。
ケース2 「秘密計算」という難しい技術をどう伝えるか
「秘密計算」という暗号技術のプレゼンがありました.正直暗号専門の自分にとってはめちゃめちゃわかりやすかったです. 自分もあれくらいわかりやすいプレゼンができるかって言われたら多分無理です. その上でみんなにわかってもらうにはどうしたらいいか考察してみました.
結論を述べると,下記3点に問題があったのかなと思います.
- まず土台となる知識(where, what, why)が共有できていなかった.
- 間違った説明でもいいから"適当な"説明をしたほうがよかった.
- そもそも時間が足りて無い.
どういうことか詳しく解説していきます.
土台となる知識の共有が必要だった
Twitterや参加者の反応をみてみると,
- 「秘密計算」が暗号技術であること
- なんで「秘密計算」が必要なのか
ここの理解を得ることがそもそもできていなかったように思います. このブログの読者さんの中には,今言われて初めて知ったという人もいるのではないでしょうか.
どんなところで(where)暗号技術が使われていて,何(what)に使われていて,なぜ(why)使われているのか言語化できる人って, 情報系でも少ないと思っています.例えば,
- Where: ECサイトやクレジットカード
- What: 自分が入力した個人情報やカード番号など
- Why: 暗号化せずに送信すると,何者かによって書きかえられたり盗み見られたりするため
そんな状況の中,「暗号化したまま計算する」「秘密を分散して計算する」のwhere, what, whyを言われてもわからないと思うんですよね.
間違った説明でもいいから"適当な"説明をしたほうがよかった.
昔,理科の授業で電流はプラスからマイナスに流れるって教えてもらったことがあると思います. でも高専の授業では電流なんてものは存在しなくて,電子がマイナスからプラスに流れているって習ったのでは無いでしょうか.
正式な書類にはハンコが必要です,って日本に住む皆さんなら一度は聞いたことがあるでしょう, そして場合によってはそのハンコ文化に苦しめられた経験があるのではないでしょうか. でもハンコに実は法的根拠ってないんですよね.だからなくてもいいんですよ(要出典).
というように,自分たちが知っていることって,便宜上簡略化された表現が多くて, 言い換えると,厳密に正しいかと言われるとそうじゃ無いことって多いんですよね. (ちょっとこれはわかりにくい例だったかもしれないので今後修正予定です.)
今回の「秘密計算」のプレゼンは自分が聞く限り"正しかった"です. 間違ったことは言ってなかったのかなと思います. なのでもう少し"手抜き"してもよかったのかなと思います. 例えば,「秘密計算」は準同型暗号とMPCによる方法があるが,MPCしかないように思わせるとか.
時間が足りなかった
全部やると1講義(90分)でも足りない気がしますよね. 実際その通りで,真面目にやるとMPC(「秘密計算」の中の1トピック)だけで1コマかかりますからね. 非常にまとまっているプレゼンだったと思います.
ケース3 自分の「タイムカプセル」はどうだったか
自分で言うのもなんですが,割と高評価ではありませんでしたか? 実際Twitter上ではいくつかお褒めの言葉を頂いております.(それでも退屈だった方申し訳ありません)
- 事前知識の共有: 「タイムカプセル」という身近な題材
- "適当な"説明: 総当たりという"適当な"説明.
- 時間: 数学的・技術的な説明はしていない.(プログラミングを除く)
- 中身が薄くならない工夫: 技術的な部分も最後に加えた.
今回自分はこのポイントを意識してプレゼンしてみました.
終わりに(ひとりごと)
自分のカンファのモチベーションって,これなんですよね.
自分のカンファへのモチベーションは2つあって,
— 68氏@新春カンファ (@mr68shi) 2020年1月11日
・非専門家への説明練習
・界隈での動向チェック&知らない情報収拾
なんだよね
うん、やっぱり全く技術のない人でもわかるような説明を自分はしたいんだろうな。今後も高専カンファはその練習場として活用させて頂けると非常に嬉しい。逆に何か提供してほしい価値とかあれはリクエストして貰えれば受け付けます
— 68氏@新春カンファ (@mr68shi) 2020年1月11日
なので,恩恵を受けるだけでなく,何か1つでも与えることができたらいいなと思います.
あと,自分は「コンサル型」のプレゼンしかできないような気がするので, 他タイプのプレゼンできる人って凄いなと思います.
結論
もし「100%みんなにわかってもらいたい」というモチベーションがあるなら,諦めずにそれを大切にしてほしいし,勉強してほしい. 逆にそうでないのなら「俺は俺のプレゼンをするんだ」を貫いてほしい.
謝辞
実は前回のカンファの発表で,「タイトルが堅苦しい(要約)」という意見を頂いて改善しました. @hiromasanta 氏には感謝申し上げます.
発表者の皆様方には,事例として活用させて頂くことにこの場を借りて感謝いたします. 問題があるようでしたら削除しますのでお気軽にご連絡ください.